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政府案の肝「第三者弁済」が不可能になる可能性も

　韓国の民法は第三者による弁済を認めてはいるが、「当事者の意思表示で第三者の弁済を認めないときは、第三者は弁済をすることができない」とも明示している。すなわち、債権者である徴用被害者が財団の弁済に反対する場合には、第三者弁済が不可能になりうるとの法的解釈も可能となる。

　そのため、被害者側の訴訟代理人団は「解決法に同意しない被害者に対して、韓国政府が供託などの方式で債権を一方的に消滅させることはできず、もし財団が一方的に供託して執行事件に提出するなどの行動をする場合、執行手続きで供託の無効を確認する手続きを進める」との見解を示している。

　つまり、たった1人でも政府案に反対する被害者がいれば、裁判所ではまた別の訴訟が続く憂慮が出てくるわけだ。

　発表後の記者ブリーフィングでは、この部分を指摘する質問が記者から出た。すると政府の担当者は「そのような問題を予想し、多角的に法的検討を行った」としながらも、「実際にそのようなことが発生すれば、改めて申し上げたい」と明確な返事をしなかった。

メディアの反応は否定的

　このままでは、韓国政府の解決案はややもすれば「第2の慰安婦合意」になる可能性が濃厚だ。というのも、一つには、韓国メディアの最初の反応がやや否定的だったからだ。左派メディアはもちろん、中道を標榜するメディアもインターネット版記事を通じて、「財源調達に日本企業が参加しない」という事実をかなり強調していた。

「韓国財団が確定判決徴用被害者に賠償、日本の被告企業は除外」（聯合ニュース）

「政府、日本企業が除外された強制徴用賠償策の『第三者弁済案』発表」（京郷新聞）

「日本企業の代わりに韓国財団が強制徴用賠償…中道半端な解決策」との指摘」（国民日報）

「慰安婦合意より酷い徴用工解決策、日本の完全な責任逃れ」（ノーカットニュース）

「政府、強制動員被害賠償に日本がいない『第三者弁済』公式確定」（デジタルメディア）

勢いづく進歩勢力

　国会で過半数の議席を占めている野党・共に民主党は「決死反対」を叫び、場外集会を継続すると予想されている点も慰安婦合意直後と似ている。民主党の李在明（イ・ジェミョン）代表は、「尹錫悦政権が歴史正義を裏切る道を選んだ」「外交史最大の恥辱であり汚点」「いったいこの政府はどの国の政府なのか」と非難しながら、「朴槿恵政権没落の端緒になった慰安婦拙速交渉を他山の石にしなさい」と警告した。

　他にも「対日屈従外交のラスボス」（鄭清来最高委員）、「尹錫悦政府案は、日本植民支配の不法性を否定するのと同じものであり、強制労働を合法的なものと認めるもの」（任善国最高委員）、「国家権利を放棄した尹大統領は1910年、韓日併合で国を日本に売った李完用と何が違うのか」（安民錫議員）などの非難が殺到した。

　進歩政党の正義党も「誰も理解できないもう一つの外交惨事」「最高裁判決を正面から違反しながら急ぐ尹錫悦政府の解決策は到底受け入れられない」とし、政府非難に加勢した。

　民主党の外郭勢力が主催して毎週土曜日に開いている「尹錫悦弾劾集会」が予想外に低調なだけに、この問題を運動盛り上げの足掛かりにしようとする思惑があるのは明らかだ。

　被害者（元徴用工）たちがメディアに直接出演して政府を強く糾弾しているという点も当時と似ている。発表当日、韓国メディアは、政府案に猛反対する被害者の声と市民団体の声を集中的に報道した。

　同時に、「正義記憶連帯」「民族問題研究所」「民主労総」など、611の左派市民社会団体で構成された「韓日歴史正義平和行動」がソウル鍾路区の外交部庁舎前で緊急記者会見を開き、政府に強制動員被害賠償解決法を撤回するよう促し、他にも全国各地で一日中、市民団体による抗議集会が開かれた。

　慰安婦合意で明らかになったように、被害者が同意できない解決策は結局、韓国国民の反発を招きかねず、ひいては政府の解決案撤回を要求する可能性もある。その事態が、万が一、手の施しようのない方向に進んでしまったとしたら、尹錫悦政権が再び解決策を練り直すことも難しく、だからといって現在の解決案を進めることもできないという「進むも地獄、退くも地獄」の危機に陥るだろう。

全文はソースで
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74230